第38回アフリカ先生「いまづ環境学公開講座2009:人類の進化」(兵庫県立西宮今津高校)報告

「野生チンパンジーの行動研究とタンザニアの人々の暮らし」(2009年11月12日)

藤本 麻里子

兵庫県立西宮今津高校の生物の授業で、アフリカ先生の出前講義を行ないました。3日間の最終日を担当しましたが、今回は全体として『人類の進化』というテーマが設定されていましたので、私の研究対象であり、ヒトに最も近縁な霊長類、チンパンジーの行動研究のお話を中心に授業させていただきました。

まずは私たちもその一員である霊長類が、哺乳類の中でどのような特徴を持った生物であるか、知っていそうで知らない霊長類の位置づけについて説明しました。また、私が研究を行なったタンザニア連合共和国のマハレ山塊国立公園における、野生チンパンジー調査のお話を、映像や写真を用いて解説しました。チンパンジーの行動の中でも研究者の関心が高く、ヒトと共通した行動でもある、狩猟・肉食行動や、道具使用行動について映像を用いて説明しました。また、チンパンジーが現在絶滅の危機に瀕していることや、その原因となっているいくつかの問題についても説明しました。チンパンジーの間に病気が流行して、多数の個体が死亡する事態が発生したマハレ山塊国立公園での出来事を、映像を用いて解説し、その後研究者が実施している対策についてもお話しました。また、チンパンジー調査を行なう上で重要な、現地の調査助手であるトングウェの人々の日常生活や伝統文化についても紹介しました。

授業の最後に、内容が難しかったか、わかりやすかったかと質問したところ、数名が難しかったとの回答でしたが、多くの生徒さんがわかりやすかったと答えて下さいました。最後に質問の時間を設ける予定でしたが、時間がなくなってしまったことが反省点です。でも、多くの生徒さんにチンパンジーの行動や、我々ヒトとの関係を理解していただけたのではないかと思います。生物の授業ということでしたが、今回の授業で一人でも多くの生徒さんに世間一般のイメージとは異なる、実際のチンパンジーの行動や彼らが置かれた状況などが伝わっていることを願っています。