アフリックをつくってから10年が経ちました。これまでの活動の積み重ねをまとめる機会にしたいと、メンバーの総力を結集して記念イベントを開催しました!スペシャルゲストは、「セレンゲティ・人と動物プロジェクト」(セレプロ)の現地パートナー・ダミアン氏です。
ダミアンは、現場で農民を巻き込むための苦労と工夫について報告しました。セレプロでは、アフリカゾウによる獣害問題に対して、畑の周囲に養蜂箱を設置してミツバチでゾウを追い払う試み「ハッピーハニーチャレンジ」を展開しています。しかし、新しい支援や技術を導入する時には慎重な配慮が必要です。特に重要なのは、1)主体的に継続できる農家を対象に選ぶ、2)対象農家の数に限りがあるので、対象にならなかった農家との間に軋轢を生まないようにする、の2点です。このために、何度も何度も集会や会議を開催して、対象農家の主体性を育みながら地域の協力を形成しています。
農民集会で説明するダミアン
さらに、同じようにゾウ被害に苦しんでいる地域で研究しているアフリックメンバーから、他地域の事例も紹介しました。このパートからは、「外部からの支援がどれほどあるかないか」が地域によって大きな差があることが明確になりました(ケニア>タンザニア>ガボン>カメルーン)。しかし、いずれの地域でも完全に防除できる対策があるわけではなく、住民が多大な被害を被っていることは共通していました。
併設した写真・生活用具の展示も大好評
このシンポジウムの素晴らしい成果は、日本の獣害問題の研究者から助言をもらえたことでした。日本でも獣害問題は深刻化する一方です。「ゾウが増えすぎないように個体数を管理することも必要だろう」「対策に効果が出ないと住民は意欲を失ってしまう」など、日本のエゾシカやサル対策の経験から学びました。ダミアンとともに、タンザニアの経験に活かしていきたいと思います。
当日プログラム
- シンポジウム:
1.タンザニア・セレンゲティ国立公園のゾウと地域住民の歴史的背景
岩井雪乃(アフリック・アフリカ代表理事、早稲田大学)
2.セレンゲティにおけるゾウによる獣害問題と住民の対応
ダミアン・トビアス(タンザニアローカルNGO・SEDEREC代表)
3.アフリカ各国のゾウ害問題との比較検討
松浦直毅(静岡県立大学・ガボン)
安田章人(九州大学・カメルーン)
目黒紀夫(東京外国語大学・ケニア)
4.総合討論 - サイドイベント:「アフリカの自然と、そこに生きる人びと」
アフリカの人と自然の関わりをテーマにした写真と、生活用具や工芸品を展示