紹介:黒崎 龍悟
椎名誠氏による「あやしい探検隊」シリーズはこれまでにいくつも出版されている。その内容は、かいつまんでいうと、著者が仲のいいおじさんたちといろいろなところに冒険的に出かけて酒をたらふく飲みながら焚火をして、食べたいものを食べるということに終始している。著者の書くエッセイは、集中しなくても読めるし、どこからでも読める。気分転換やリラックスしたいとき、仕事が停滞したとき、難しいことを考えたくないときに向いている。私は、とくにビールを飲んでいるところの描写が好きで、手にすることが多い。
「アフリカ乱入」はシリーズ5作目となっている。このシリーズは、一癖も二癖もある人たちが登場して、世の風潮と一線を画して、好きなように旅をする、というのが基本路線なので、必ずしも万人受けするものではない。しかし、本書を読んでおかしかったのは、国内では辺境地に行って破天荒なことをする人たちが、アフリカ(ケニアとタンザニア)では、定番の観光コースで、定番の感想を述べていることだ。アフリカという土地が彼らの旅を普通にさせるのか、あるいはそもそもサバイバル的な旅をやっていた人たちがアフリカに来たので、その型破りな部分が薄められて見えるのかよくわからなかったが、いずれにせよあまり「乱入」という感じではない印象だ。
それでも時々、「探検隊」ならではという部分もある。サバンナの木陰で持参したそうめんを茹でて食べるなどはうらやましくて唸ったし、キリマンジャロ登山の道中の酒盛りの写真が、まるで日本の居酒屋かと思わせる雰囲気を醸し出しているのは、本領発揮といえるかもしれない。そして例にもれずビールを飲むシーンには心が和む。
アフリカのことはそれほど詳しく書いてあるわけではないのだが、「あやしい探検隊」がアフリカではあまり「あやしくない」という、そのギャップを楽しみたい方にはお勧めかもしれない。
書誌情報
文庫: 234ページ
出版社: 角川書店 (1995年)
ISBN-10: 9784041510117
ISBN-13: 978-4041510117
単行本: 210ページ
出版社: 山と溪谷社 (1991年)
ISBN-10: 4635170500
ISBN-13: 978-4635170505