『ハンター 猛獣王国ケニヤでの二六年』 J.A.ハンター著、川口正吉訳

紹介:安田 章人

植民地時代、アフリカを支配した西洋人たちは、どのように「エキゾチック」な野生動物を狩ったのか。それを今に伝える貴重な和書です。最近でこそ、「狩猟ブーム」のおかげで、狩猟に関する著書やマンガが増えてきたが、過去の狩猟に関する和書は少ない。ましてや、アフリカに関するものは、この本以外に、『最後のサファリ』(田島健二著)や『アフリカサハリ大陸』(柳田佳久著)ぐらいかと思われる。この2冊は、70年、80年代にアフリカに狩猟旅行をおこなった日本人ハンターが書いたものであるが、今回紹介するこの本は、J.A.ハンターというイギリス人狩猟家が独立前のケニアで、狩猟ガイドとして活動していた様子を克明に記述したものである。

本では、現在のケニア、タンザニア、ウガンダなどでゾウやサイなどの大型野生動物を狩猟する様子や、ヨーロッパから来る遊猟客や当時の現地に住む人びとの姿が詳細に描かれている。たとえば、しかし、そこでは「高性能な銃をもって、凶悪な野生動物を駆逐し、アフリカ人の命と作物を護ってくれている」という記述が端々に登場する。現在で言えば、「ヨーロッパからの侵略者の傲慢な見方」となるが、当時の入植者のアフリカ観を垣間見る貴重な資料であろう。

スポーツハンティングの研究をしている私にとっては一級の資料であるが、植民地時代のアフリカの一場面を知りたい方にも貴重な読み物となると思う。

ABOUTこの記事をかいた人

日本とアフリカに暮らす人びとが、それぞれの生き方や社会のあり方を見直すきっかけをつくるNPO法人「アフリック・アフリカ」です。