見習い生の試験の時期がやってきました

 

 

前回の髪結い・仕立て屋の試験から約2年半、毎年あるはずの試験がまったく開催されないので、見習い生もパトロンもやきもきしていましたが、今年8月にやっと試験が開催される告知がありました。どうも開催の責任を負っている手工業職業の組織の長をめぐって政治的な争いがあり、そのせいで試験が実施されなかったそうです。組織に業を煮やした大統領の介入があり、やっと試験が行われることになったのだとか。こうした経緯から、今年からの試験は口頭試験が増え、また技術的な審査も厳格なものになると噂されていました。そう聞くとじゃあこれまではいい加減な試験だったのかという気がしたので、NGO職員に聞くと、必ずしもそういう訳ではないが、やはりコネが有利に働いたり汚職があったりということはあったと言います。「ベナンを知っているだろう?」と職員は言います。確かに、ベナンの公務員試験などがコネなしでは受からないのだという嘆きは、耳にタコができるほど聞いたことがあります。ただ、現在の大統領はこうした習慣を撲滅しようと、かなり力を入れてきました。その余波が、やっと髪結い・仕立て屋といった領域にも来たのでしょう。そう考えると、コネも何もないNGOの見習い生たちにとっては、それほど悪いことではない気がします。

今回の試験を受けられるのは、NGOで支援する見習い生の内、すでに3年以上の期間を終えた2人です。髪結い見習い生のドルカスと、仕立て屋の見習い生のマリ・ポールです。2人とも技術的な実力としてはまず大丈夫だろうとパトロンは言っていましたが、今回口頭試験も始まるのでその対策なども集まって行いました。合わせて、NGOのスタッフは見習い生の受験にあたって必要な書類を集めるのに大わらわ。出生届などが必要になるのですが、ベナンでは生まれた時に届けが出されないことも多く、その場合は一から申請する必要があるからです。余談ですが、こうした感じで必要に応じて出生届を後から出すことがあるため、ベナンでは公的な年齢と実年齢が一致しない人はそんなに珍しくありません。かつては公的な仕事をもらうのに必要だから、この年齢で出しておこう、といった形で登録されたりもしました。そうした事象に出くわすと、私などは公的な枠組みを掻いくぐり上手く振舞う人びとの抜け目なさに感心してしまいますが、国家としては人口すら捕捉できないのはやはり問題のようで、近年は出生届を出すことをキャンペーンなどで推進しているので、出していない人は大分減ったようです。

ともあれ、無事試験に必要な書類も出し終え、受験料も支払い、2人とも11月初旬に試験を受験することができました。10月の終わりから11月初旬の1週間は、アトランティック県の農産物加工業、左官、家具職人、機織り、カメラマンなど、見習い期間を経て試験を受けるタイプの職業の試験が一斉に行われたので、どの職業の人びともハラハラした1週間だったに違いありません。みながそれぞれの闘いを繰り広げる中、私たちの見習い生も、実技試験と口頭試験を緊張しながら受けたようです。そして待つこと1か月強、12月初旬に市役所に貼りだされた合格者の名前に2人の名前を無事見つけることができました!マリ・ポール、ドルカス、二人とも本当にお疲れさまでした。二人のこれからが楽しみです。

 

受験票を得て緊張の面持ちの見習い生たち(真ん中2人)