わたしの研究履歴:マサイ社会をめぐるテーマの変遷
2015年12月4日、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科の修士課程の講義「論文作成法㈼」でアフリカ先生をしてきました。アフリカ先生として講義をする場合、基本的にアフリックのメンバーは自分の経験や研究にもとづいた話をするわけですが、今回のアフリカ先生はこれから研究論文を書く6人の大学院生が対象です。そこで、アフリカについての講義という以上に、わたし自身が学部学生のころから現在まで、どのように現地調査を計画・実施しながら研究論文を書いてきたのかということを話しました。
わたしがケニア南部のマサイ社会を現地調査の対象に選んだのは、そこが野生動物の豊富さで有名であり、これまでに数多くの研究者によって野生動物をどのように守っていくべきなのかが研究されてきたからでした。すでに数多くの研究がなされているということは、現地についての情報がたくさんあることを意味します。しかし、それだからといって現場のすべてが明らかになっているわけではありません。また、時とともに人びとの考えや現地の状況は変わってきます。わたしが2005年から現在まで、ケニア南部の1つのマサイ社会をずっと調査してきたのも、一つには調べても調べても分からないこと、疑問に思うことが出てくるからでした。またもう一つには、一年も経つと大きな変化が現場には起きていて、その理由や展開を理解しようとする思うと何度でも足を運ばなければならなかったからでした。そうした経験から、研究論文を書くうえでは先人の研究成果を勉強することも大切だけれども、過去の情報を過信することなく現場における気づきも大切にするべきだということを説明しました。
講義を受けた学生たちからは、より具体的な調査の進め方や論文の書き方などの質問を受けました。まだまだ研究者としては未熟な身ですが、成功・失敗の両方をふくむわたしの試行錯誤の過程が少しでも学生たちのこれからの研究に役立てば嬉しいです。