第55回アフリカ先生「いまづ環境学公開講座」(兵庫県立西宮今津高校)報告

「西アフリカにおけるパーニュを用いた現代衣装とファッション」 (2010年11月2日 「服飾文化」)

遠藤 聡子

西アフリカのギニア湾沿岸を中心とした広い地域で、「パーニュ」と呼ばれる強烈な(そして美しい)色・柄のプリント生地が服地として用いられています。パーニュは、ジャワ更紗の模造品にその起源があり、ジャワ更紗に似た絵柄もありますが、鍋などの日用品や、目や手など体の一部といった、独自の絵柄も多くみられ、これらの絵柄が鮮やかな色と力強い線でプリントされています。このパーニュを、地域の仕立屋で一着ずつ服に仕立てたものが、現地の女性の日常着、晴れ着となっています。女性がパーニュを上着とスカート、頭に巻くスカーフとして、頭から足もとまで全身にまとう姿は非常に美しいです。

パーニュの衣装を身に着ける女性
 

世界各地で身に着けられる服装は、洋装化の傾向が著しいですが、この地域ではパーニュを用いた衣装が日常着として広まっています。もともとはヨーロッパで製造されたパーニュが、西アフリカにもたらされたのは今から1世紀ほど前のことですが、他の多くの地域で洋服が広まったのに対し、このような独自の衣装が形作られ現在のように広く普及しているのは、どうしてなのでしょうか。授業では、パーニュを用いた衣装の特徴を説明したあと、この衣装が普及する背景として、地域での衣装生産の様子と、衣装ができた歴史的過程についてお話しました。

授業を振り返ってみると、写真を多く見ていただけたことはよかったと思うのですが、話すことに精一杯で、せっかく生徒さんたちのために用意していたパーニュやパーニュでつくった衣装を、実際に触ってもらう時間をつくることができませんでした。そこが大きな反省点です。駆け足の50分になってしまいましたが、美しい衣装の魅力を、少しでもお伝えすることができているといいなと思います。