服部 志帆
受けもった二つのクラスは、9から11歳の子供たちが対象の英語のクラスで、人数は40名ほど。言語研修のためにカメルーンに滞在していた田畑さん(京大アジア・アフリカ地域研究研究科)が参加し、お手伝いをしてくださいました。授業のねらいは、彼らと同じカメルーンに暮らす狩猟採集民バカ・ピグミーの文化について理解を深めること、森とバカ・ピグミーの文化を保全していく必要性をいっしょに考えることです。昨年に続く、カメルーンで行う二度目のアフリカ先生です。
教室に電気が通っていないため、校長室に30mのコードをつなぎ、教室まで電気を運びました。昨年と同様に、大きな白い布を壁にはりつけ、そこにピグミーの写真を映し出しました。まず自己紹介をし、写真を使いながら、質問形式でバカ・ピグミーの生活を紹介していきました。子供たちは、初めて見る森の動植物たちやそれを巧みに利用するバカ・ピグミーの様子に見入っていました。写真は、子供たちの好奇心を刺激し、質問の嵐を呼びました。勢いよくまっすぐに手を挙げてくれます。とくに、バカ・ピグミーの住居にある物質文化に関心を持ったようで、一つ一つチェックしながら、自分たちのところにもあるとかないだとか、熱心でした。最後に、伐採や新たに始まった自然保護プロジェクトによってバカの生活や文化が危機的な状況に追い込まれていることと、バカが森とともにいつまでも暮らしていけるように、森と一体になって暮らしてきたバカ・ピグミーの生活や文化を考慮した開発や自然保護を考え直す必要性があることを伝えました。
前回と同じく、元気のいい子どもたちに圧倒されながらも、とても楽しく授業を終えることができました。カメルーンの小学校では、授業のなかで子供たちが正解を出したときに、”Clap your hands!”といい、軽快なリズムの拍手で正解者をねぎらいます。今回もまた最後に、「バカにとって最も大切なものは何ですか?」という質問をし、子供たちが声をそろえて”forest”と答え、拍手のなか授業を終えました。
カメルーンの都会で暮らす子どもたちが、バカに対する差別や偏見を持たないようになり、将来バカが森といっしょに暮らしていけるように、このようなアフリカ先生をできたことはうれしいことです。しかし、どれほど効果があったのでしょうか。次回は、子どもたち向けのレジュメや小さなテキストブックなど、準備できたらおもしろいかと思いました。また、いつか都会に暮ら子どもたちをバカ・ピグミーの暮らす森へ案内してみたい、そんな夢もあります。今回、小学校を訪れた時、昨年わたしの授業を受けてくれた子どもたちが走ってきて、「また森の話が聞きたいから、うちのクラスに来てね」と言ってくれました。残念ながら、彼らのクラスではできませんでしたが、来年もまたやりたいという思いが強くなりました。