2年半ぶりの活動地

岩井雪乃

コロナ禍で渡航できなかった2年半を経て、2022年8月に、ようやくゾウプロジェクトの活動地に行くことができました!

農業でつないだ村の生活

うれしいことに、私がお世話になっている人たちは元気に生活していました。ホームステイ先のおばあちゃんが、昨年急に亡くなったのですが、彼女が唯一、新型コロナだったのではないかと言われていました。検査したわけではないので確信はなく、家族が推測しているだけです。他にはコロナ感染と思われる例は、村では発生していませんでした。

あまり変わらない村の日常

コロナ中、観光産業が完全にストップしてしまったので、現金収入の機会は激減してしまいました。それは問題ではあったのですが、人びとはたくましく農業や牧畜業にシフトして、なんとか生活をつないでいました。「アフリカゾウと共生する」と言った時に、しばしば「ゾウの被害に遭う農業はやめて、住民は観光収入で暮らせばいい」という意見があります。今回のコロナ禍は、観光に依存することが危険であり、農業を生活基盤として持ち続けることの重要性を改めて示したと言えます。

追い払い隊のみんと再会を喜ぶ

ミセケ村は被害が減りつつも、油断できない日々

ミセケ村は、2020年に電気柵ができたため(近隣の観光ホテルが設置)、ゾウの襲撃はかなり少なくなりました。追い払い隊メンバーは毎晩の見張りから解放され、自分の経済活動に使える時間が増えていました。中には、町に頻繁に行く小商を始めたり、村から離れて出稼ぎに行ったりする人も出ていました。

村に侵入したゾウ。人家の近くに出没(写真の上部、真ん中にいる)。道路の左側が保護区で右側が村

とはいえ、月に1回ていどはゾウが入ってくることはあり、私が滞在している間にもゾウ6頭が侵入してきました。その日は、朝から夕方まで12時間以上、村の中を右往左往するゾウを追いかけました。そのゾウたちは、夜に村の畑に作物を食べにきて、陽が登ってからも保護区に帰らず、村の中の薮林に入って動かなくなってしまったのです。薮の周りには人家があるので、ゾウをそのままにはしておけません。保護区の方へ追い出そうと脅かすのですが、途中まで行くと、また茂みに戻ってきてしまいます。思うようにゾウは動いてくれません。その間、メンバーは食事はもちろん水すらない状況でした。夕方になってようやく銃をもった政府の担当官がやってきて、メンバーと連携してとうとう追い出すことができました。その後に、ようやく飲めた水のおいしかったこと!

村内の藪林の中に隠れるゾウ。写真中央に6頭が横に並んでいる

ゾウを取り囲んで追い出すために、追い払い隊が薮林の中に入っていく。危険な活動。道路の左側が村で、右側が保護区

新しい村に追い払い隊ユニフォームを寄贈

本プロジェクトの主な活動地のミセケ村で被害が減少したことを受けて、今回は、新しい活動地を探すため、シンギシ村とイハララ村を訪問しました。二つの村は、セレンゲティ県南部に位置しており、電気柵はなく、年々ゾウの被害が拡大しています。ここ数年の間に追い払い隊が結成され、住民が連携して対策するようになっています。

シンギシ村での集会

とはいえ、まだ経験が浅く、うまく追い払えていません。そこで、ミセケ村の追い払いメンバー2名を講師として派遣し、セミナーを開催したり一緒に追い払いをして、実践的指導をしてもらいました。

ミセケ村の追い払い隊メンバーが講師

ミセケ村と同様にこちらでも、ゾウを追い払う際に保護区の中に入ると、保護区職員に逮捕されてしまいます。そこで、本プロジェクトから30着のユニフォームを贈呈しました。

イハララ村の追い払い隊にユニフォームを贈呈

今後の連携について、さらに相談しながら進めたいと思います。