第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)に参加して

岩井 雪乃

2008年5月28-30日、第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)が横浜で開催されました。

日本は世界で第5位のODAを拠出しており、アフリカに対して影響力を持つ国です。この日本のODAを、アフリカの困難な状況にある人々に届けるべくウォッチしていくことは、アフリカのよりよい未来を願う私たちアフリックにとって重要な活動です。また、「日本の市民として、日本の政府に働きかける」ことは、「日本人だからこそできる支援」の最たるもので、日本人としての責任とも考えています。

今回、アフリックは、NGOのネットワーク団体であるTICAD IV NGOネットワーク(TNnet)に加盟して、TICADに関わらせてもらいました。政策提言などのアドボカシー活動に関して経験の少ないアフリックは、学ばせてもらうことの多い活動でした。

1.印象に残った大統領スピーチ

外務省ホームページより

TICADの本会議場で、アフリカの大統領たちの演説を聞けたことは貴重な経験でした。ダイジェストで内容を知るのと、直接演説を聴くのでは、違ったインパクトがありました。

ウガンダのムセベニ大統領の演説に、モニタールームのアフリカン(多くは政府関係者と思われる)が大いに沸いていたのが印象的でした。「アフリカの農産物は搾取されている、欧州は加工して販売することで利益をあげている、ウガンダのコーヒーはいい例だ、我々が欧州を援助しているようなものだ」という内容でした。これに対して会場から大きな拍手や口笛が飛んでいました。

アフリカ各国が、援助に頼らずに経済的な自立を目指しており、そのためにアフリカが搾取されない貿易枠組みを求めていることが、他のスピーチにも出ていました。WTOの枠組みは、欧米のグローバル企業に有利になっています。アフリカ首脳が力強く声を上げているのを頼もしく思いました。

2.市民社会の声

とはいえ、政府だけに任せておいては、本当に貧困削減につながる援助にはなりません。本会議での首脳陣の議論は成長の加速化が強調されていました。それに対する日本政府の対応も、民間企業のアフリカ進出をODAでサポートすることが打ち出されています。それで、本当に困難な状況にある人の生活が改善されるのかは大きな疑問です。国内格差がますます広がる心配があります。

TNnetは、市民社会の声として「人びとを向いたTICAD」になるために、さまざまな訴えをしました。その中で、ミレニアム開発目標(MDGs)が焦点化される、無償援助の増額が決定されるなど、一定の成果はありました。しかし、その一方で、経済開発に大きく傾いた流れを、どこまで貧困者の支援に引き戻せるのかは不確定です。

大きな成果は、日本でのアフリカに対する関心を広く高めたことです。今回は、アフリカ関連イベントがかつてない数と規模で開催され、多くの人がアフリカに触れました。ほとんどの企画は、一般市民によるものでした。アフリックが出展した「アフリカンフェスタ2008」では、20万人の来場者があったと報告されています。この成果は、TNnetをはじめとしたNGOの力があってこそでした。

現在は、洞爺湖サミットで引き続きアフリカ開発が議題となって話し合われています。今後もアフリックは、政策ウォッチに関わる努力をしていきたいと思います。

●TNnetの活動の詳細に関しては、プレスリリースをご覧ください。
http://www.ticad-csf.net/TNnet/press-release.html

●外務省のTICAD IVのページ
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/ticad/index_tc4.html

ABOUTこの記事をかいた人

日本とアフリカに暮らす人びとが、それぞれの生き方や社会のあり方を見直すきっかけをつくるNPO法人「アフリック・アフリカ」です。