アフリック・アフリカは、2007年8月より加盟したTNnet(TICADIV NGO Network)における活動の一環として、10月30日、31日にザンビア共和国の首都ルサカ(ムルングシ国際会議場)で開催されたTICADIVザンビア地域準備会合市民社会セッションに参加した。TICADの準備会合で市民社会セッションが開催されるのは実に初めてのことであるが、これはTNnet立ち上げ以前より市民社会が積極的におこなった政府への働きかけが実を結んだ形となったものである。アフリック・アフリカは、まさにその歴史的会合に参加した数少ない日本NGOとして名を連ねることになった。そこで以下に、会合の概要と所感を報告したい。
概要
市民社会セッションは、TNnetと、ザンビアNGOのPELUMおよびNGOCCの3団体共催でおこなわれた。このセッションの目的は、1)TICADプロセスのなかに市民社会が参加すること、2)地域準備会合に東南部アフリカと日本の市民社会の声を反映させること、3)TICADの共催機関およびアフリカの各政府に対し、議論へのインプットを通して市民社会の重要性を示すことであった。第1日目にあたる10月30日は、参加者31名(アフリカNGO5名、ザンビアNGO 13名、日本NGO 7名、アフリカ政府関係者1名、ザンビア政府関係者3名、メディア関係者1名)をむかえ、活発な議論が交わされた。議論の中心となったのは、TICAD3つの主要テーマ「環境と気候変動」、「人間の安全保障」、「経済成長と貿易」である。午前より基調講演がはじまり、午後には分科会と全体討論を経て、市民社会からの提言書が作成され、盛会のうち終了となった。 2日目(10月31日)の本会合会場では、市民社会代表のMr. Ssuuna(PELUM 事務局長)が30日にまとめた提言書を読み上げ、会場からいくつかのコメントや質問をうけた。議長からは、TICADIVに向け、市民社会の必要性と存在感を大いに有力なものとするコメントが出された。これを受けた参加した市民社会団体は大きな達成感に包まれた。
所感
○市民社会の議論からみた3つのテーマ
3つのテーマに関する議論で共通するのは、アフリカ市民社会が、現地により均質で実質的な能力や資本の定着を求めていることである。均質性の点では、援助実施地選択における地域格差(都市と地方)を失くすことや、さらには社会的弱者(女性、障害者、感染症患者等)へ均等な機会と権利を保障する配慮が欠落していることが指摘された。また実質的な能力や資本の定着の点では、都市や地方による偏りなく現地社会に知識や利益が還元されるような開発援助を求める声が大きかった。そうした声は示された具体的な解決策からも読み取ることができる。例えば、ローカル・ノレッジおよびローカル資本の活用や地方の生計活動の促進を伴う開発援助がなされるべきであること、情報の公開、国際社会/調査者/実践者/コミュニティの協力などであった。
○TICADIVにむけて、日本/アフリカ市民社会の今後
今回TICADIVルサカ地域準備会合における市民社会セッションは、分科会としてではなくあくまでサイド・イベントであり、また市民社会は本会合においてオブザーバーとしての参加を許可された。市民社会セッションの運営は、会場および設備の確保を除き完全にTNnetにゆだねられており、会場の案内地図も市民社会セッション参加者の団体名等も、当日の配布資料になかった。しかしながらTICAD地域準備会合において、市民社会がセッションを開催するという記念すべき機会をもてたことは、日本およびアフリカ市民社会が日本の対アフリカ支援に参入する上での大きな一歩となったことは間違いない。 10月31日の本会合における市民社会からの提言書を読み上げたSsuuna氏に対し、本会合の小田野議長は『市民社会のインプットは、「TICADとは何か」を我々に再び問いかけてくれた。TICADは何を目指すものであったのか。我々はTICADIVで、また新たなパラダイムを見出すであろう』とコメントした。これは日本のアフリカ開発部門に新たなパラダイムを見出すきっかけ作りに、市民社会からの貢献を肯定し評価するものであるといえる。こうした評価を得られたのは、今回の市民社会セッション開催までの地道な積み重ねに併せ、10月29日の事前会合に始まり30日の市民社会セッションにおいて、日本・およびアフリカ市民社会が、現地に生活する人びとの視点から様々な問題群と解決策を指摘した点が評価されたのではないか。そして同時にこの評価は、現地アフリカでアフリカ市民社会の声を聞く意義を、日本の市民社会とTICAD共催者に訴える結果ともなったのではなかろうか。 日本の市民社会によるTICADIVにむけた活動は、特にこの一年の間に大きく躍進した。国内においては、折に触れ外務省および関連各所へ働きかけをおこない、TNnetの立ち上げ、アフリカ市民社会団体を招聘してのワークショップやシンポジウムを成功させ提言書もまとめ上げてきた。もちろんアフリカにおいても、ナイロビ市民社会会合を開催し、アフリカ市民社会委員会(CCFA)結成を果たしてきたことは、ルサカ地域準備会合における市民社会セッション開催の前身ともなった成果であった。 しかし今回の東南部アフリカの一国における会合を通して切実に感じるのは、日本政府主導のTICADプロセスのなかで、現地アフリカにおいてアフリカ市民社会の声を聞くことの重要性である。それは参加可能な団体数の問題だけでなく、日本の我々が激動するアフリカ社会を肌で感じながら、その動きのなかに彼らの声を位置づけることを欠いてはならない、ということを意味している。TICADIVが、アフリカの市民社会に向いた、アフリカの市民社会のための結果をもたらすよう、日本の市民社会も今後さまざまな活動や方針をさらに具体化していく必要に迫られてい る。