ローカルNGOとの協働プロジェクト(エチオピア)

プロジェクト責任者:森下 敬子

世界規模で深刻化しているHIV/AIDS問題に対し、エチオピアでも様々な取り組みが進められています。このプロジェクトでは2002年から、日本の有志の方から頂いた古着を、エチオピアのMary Joy Aid through Development (以下MJA)というローカルNGOと協力して、HIV孤児らに届ける活動を開始しました。

エチオピアでは、2004年現在700以上のNGOが活動していますが、そのうち600はエチオピア人が設立したローカルNGOです。規模も活動分野も様々ですが、ローカルNGOの多くは、スタッフの出身地でコミュニティと密接に関わりながら地域開発を行っています。自分の出身地での活動となると「いま何がいちばん村で必要とされているのか?」という現地のニーズを、NGO側も理解しやすいという利点があります。また「自分の村のために」という強いモチベーションがあるため、スタッフも非常に仕事熱心です。

しかしローカルNGOが万能かというとそんなことはありません。例えばエチオピアでは、州や民族によってローカルNGOの分布に偏りがあるため、学校や病院が足りなくても、どうやってドナー団体にアクセスすればよいか分からない人たちがたくさんいます。専門性の高い技術的なことになると、外国人の方がよく知っていることもあります。またローカルNGOは国際機関や先進国政府からの援助をおもな活動資金としており、自己資金が少ないことが多いため、現実のちょっとした問題に柔軟に対応できないということもあります。

本プロジェクトでは、このようなローカルNGOを側面から支援することを通して、人々が望む社会の実現に近づくことを目指しています。また一緒に考えながら活動を行うことで、私たちもエチオピアについてより深く学ぶことができるのではないかと思います。

現在エチオピアの首都アジスアベバ市の人口は約300万人で、そのうちHIV/AIDS羅患率は15.6%と言われています。HIV検診を受診していない潜在的ウィルス感染者、またHIV/AIDS発症前に死亡するケースもあるため、実際はもっと多くの人々がHIVウィルスに感染していることになります。

エチオピアでは多くのNGOが、ワークショップを開いてHIV/AIDSについての正しい知識を広めたり、予防活動を実施したりしています。しかしその努力の一方で、実際には多くのHIV感染者が、職場を追われ、家族や親戚、知人から絶縁され、さらに住む場所すら失うこともあります。

MJAではこのようなHIV感染者と孤児を対象に、住居や里親を紹介したり、MJAの経営する病院での医療サービスを無料で提供したりしています。日本から送られた古着は、本プロジェクト責任者森下とMJAスタッフで話し合い、HIV感染者や孤児の中でも特に経済的に生活が苦しく、衣服を購入することが困難なHIV感染者やその孤児たちに届けています。


写真中央に写っているゲトネット君(6歳)は、1年前に母親をHIVで亡くした孤児で、日本から送られたズボンを貰いました。彼自身はHIV陰性ですが、親戚は誰も彼を引き取ってくれなかったので、HIV感染者の女性が母親代わりとなって近所の人たちと一緒に彼の面倒をみています。

責任者紹介
私は1998年に、エチオピアのローカルNGOを対象とした調査を行うため、初めてエチオピアにやって来ました。このときに出会ったのがMJAです。私は、エチオピアの将来について夢を持って語るローカルNGOの人々と知り合う中で、「自分にできることから始めよう」と思うようになりました。これからもエチオピアや日本の友人たちと話し合い、実地を通して学びながら、人びとがオーナーシップを持って選択した社会の実現に向けて、活動していきたいです。

 

ABOUTこの記事をかいた人

日本とアフリカに暮らす人びとが、それぞれの生き方や社会のあり方を見直すきっかけをつくるNPO法人「アフリック・アフリカ」です。