第34回アフリカ先生報告「東京外国語大学本郷サテライト」

「ザンビア西部における地域開発—在来の生業システムに着目して」
(2009年6月18日)

岡本 雅博

共同研究「紛争後の亀裂社会における地域開発の課題〜モザンビークとルワンダを中心に」(舩田クラーセンさやか主催)では、紛争のあったモザンビークとルワンダとの比較の視点として、紛争を経験していないザンビアも研究対象地としている。共同研究の第2回勉強会(6月18日、東京外国語大学本郷サテライト)で、アフリック会員の岡本がザンビア西部州バロツェ氾濫原におけるロジの生業と地域社会の特徴、およびロジ社会における地域開発のありかたについて発表した。

「アフリカにおける有機農法普及の課題と可能性」の研究グループとの共催ということもあり、アフリカの在来農業や地域開発に関心をもつ人びとを中心に、約20名の参加があった。ディスカッションでは、ロジの牛囲いを移動させておこなう独特の施肥法や、季節的な洪水の制約を受けやすい氾濫原の農業と漁撈の関係、ロジの王制とザンビア国家との関係、あるいはロジの慣習法に基づくローカルな裁判制度などについて議論がなされた。

この研究会では、ザンビア西部州に拠点を置くNGOであるZVDI(Zambezi Valley Development Initiative、ザンベジ川流域開発イニシアチブ)との連携もすすみつつあるという。舩田氏からは牛銀行の導入の可能性についての質問があった。ザンビア西部州では2000年以降の牛廃疫の流行により牛の数が大幅に減少し、従来からの牛囲いを用いた施肥法も充分になされていない状況にある。牛の数が回復することによって畜産が盛んとなるだけでなく、農業生産の安定にもつながるため、この取り組みはぜひともうまくいってほしいと思う。

ZVDIの設立発起に関わったLawrence Flint氏は、私とほぼ同時期にロジ研究を始めたイギリス人研究者であり、現在は在セネガルの環境系NGO のENDA Tiers Mondeで活動している。彼は、2006年に京都大学で開催されたワークショップに参加してくれ、また2008年には現在私が勤務する総合地球環境学研究所のレジリアンス・プロジェクトにも客員研究員として在籍した経験がある。舩田氏を含む日本のNGO関係者や研究者・学生らがザンビア西部州の地域開発に関心を寄せ、そしてFlint氏が立ち上げに関与したNGOと関わりをもちはじめていることは、私にとっては大きな喜びである。こうしたさまざまな縁を感じつつ、私自身としても地道な活動を続けていきたいと願う。