「西アフリカのニューヨーク」とも呼ばれる大都市・アビジャンには、高層ビルもあればインターネットカフェだってある。この本は、コートジヴォワールの首都アビジャンに暮らした日本人女性による生活の記録である。都市といえども、そこはアフリカ。時間の流れはゆったりとしており、人と人との関係は濃厚である。日記風の構成をとる本書は、アパート探しにはじまり、ハウスメイドの雇用、市場での買い物、食生活、結婚や葬式、あるいは呪術にまつわる話などが、みずからの経験をもとにいきいきと描かれている。滞在中に体験したクーデターに関しても、近所の人たちの証言などをまじえ、一般市民の側からみたクーデター像というものを浮き彫りにしており興味深い。旺盛な好奇心と冷静な観察眼をもち、現地の人たちとの交流を自然体で楽しもうという著者の姿勢には好感がもてる。アフリカの都市の日常を知ることができるだけでなく、異文化とどのようにつきあうかということを考えるうえでも有効な一冊である。
『アフリカの「小さな国」—コートジヴォワールで暮らした12カ月』 大林公子=著
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