第75回アフリカ先生「つづきMYプラザ」報告(2013年11月29日)

「ブッシュマンの子育て:親が子どもに伝えたいこと」

丸山 淳子

11月29日に、つづきMYプラザにて「ブッシュマンの子育て:親が子どもに伝えたいこと」と題した講演の機会をいただきました。横浜市都筑区の多文化・青少年交流センターであるつづきMYプラザでは、これまでにもボツワナに関係したイベントが開催されてきました。最近では、第17回カナガワビエンナーレ国際児童画展巡回展とあわせて、ボツワナの小学生の絵画にフォーカスした展覧会も催されたのですが、実はその小学生たちが、私が長らく調査を続けているボツワナのコエンシャケネ定住地の子どもたちだったのです。この嬉しい偶然が、今回のご依頼につながりました。

講演では、ボツワナに暮らすブッシュマンと呼ばれる少数民族についての説明をしたのちに、この人々の子育てについて、いろいろな写真を見ていただきながら進めました。まず子育てには、親だけではなく、年長の子ども、家族、親戚、ご近所さん、通りすがりの人など多様な人々が関わっていること、そしてたくさんの人々との関わりのなかで、子どもたちが分かちあうことを覚え、観察や模倣を繰り返しながら成長していくことを紹介しました。もちろんそれでも、ブッシュマンの大人たちも、時代が大きく変わるなかで「これでいいんだろうか」と悩み戸惑いながら、子どもを育てています。とりわけ新しくこの社会に導入された学校や病院などとどんなふうにつきあいながら子育てをすべきかについては、様々な葛藤があることも述べました。そして、私がブッシュマンの子育てを間近で見ながらもっとも感銘を受けた点、すなわち子どもの自律性を徹底して尊重しようとする態度や、個々の生き方の多様性や柔軟性を大切にする姿勢について、いくつかの例を挙げながらお話ししました。

会場にはさまざまな年齢層の方が集ってくださり、さらに子どもたちが遊べるスペースも設けていただいたので、和気あいあいとしたアフリカ的な子育て空間が再現されたかのようでした。また天井にはボツワナ国旗の水色と黒の幕がかかり、壁にはボツワナの写真や小学生の描いた絵が展示されていて、ボツワナらしさ満載のなかでお話しさせていただきました。

子育て中の参加者の方からは「自分のキャリアももっと柔軟に考えて、子育てが落ち着いたら社会や他の人の力をかりて、別の仕事を探せばよいのだなと肩の力がぬけました。」「(子どもの)好きなようにさせなさい」という(ブッシュマンのおばあちゃんの)言葉は、心にひびきました」といった感想を、また子育てを終えた方からは「なかなか子育て中は余裕もなく、育児書にかじりつき子どもを育てる時があったけど、若い時にこの話が聞けたらどんなによかったか。」という感想をいただきました。

日本の子育て状況と、ブッシュマンのそれとは、もちろん違うことがたくさんありますが、子どもが育っていくというプロセスに大人たちがどんなふうに関われるのか、参加者のみなさんといろいろな角度からお話ができたことは、私にとっても学ぶことがたくさんありました。またいくつものご縁が重なって、都筑区とボツワナがつながり、私もまたそのつながりを強化する一員になれたことも、とても嬉しく思いました。