「草を埋めて穴を掘る—タンザニア南部の集約的農業」
黒崎 龍悟
アフリカの農業発展について、どのように考えるかをテーマに、以下の流れで話をしました。
これまでアフリカではおおくの農業開発援助が実施されてきましたが、それほどめざましい成果をあげることができていませんでした。この背景には、援助を実施する側が、アフリカの農業を「遅れた農業」と考えて、近代的な農業へと急速に変化させようとしていたことがあります。そこでまず、アフリカの農業を詳しく知ることの重要性を提起し、そのうえで特にポイントとなる粗放的/集約的農業の違いについて説明しました。
アフリカで広くみられる焼畑農業が、いわゆる粗放的と呼ばれる農業で、これが、先進国の高度に機械化された集約的農業と対比されて「遅れた農業」として言われてきたことについて述べました。しかし土地生産性、労働生産性、エネルギー効率を比較した評価をとおして、粗放的であることが必ずしも「遅れた農業」ではないということについて説明しました。
粗放的な農業は、自然環境のサイクルにうまく組み込まれながら営まれてきたのですが、近年では人口の増加などで、それが成立する状況も変わりつつあります。現在、粗放的農業に頼るだけでは十分な収穫量をえることは難しく、かといってアフリカの僻地農村で、先進国のような集約的農業を推し進めることは容易ではありません。そこで、アフリカ独自の集約化のありかたを考える必要があることを述べ、古くから続けられていて、焼畑農業とはまったく異なる性格をもつ、タンザニアのマテンゴの農業を紹介しました(マテンゴの農業についての詳しい説明は昨年の報告を参照してください)。