2011年12月10日、公開講座「アフリカのパパ・ママから学ぶ子育て」を開催しました。これは京都府国際センターとの協働事業「アフリカ理解講座」の一環として実施したもので、2010年12月19日に開催した「アフリカのママから学ぶ出産・子育て」の続編にあたる企画です。
今回の講座では、エチオピア人ジャーナリストで、現在は京都で育児中のヒビテ・テスファイエさん、京都大学准教授で、アフリカ南部で生活する狩猟採集民の子育てに詳しい高田明さん、アフリック副代表で、福島市内で子育て中の西崎伸子(福島大学准教授)の3名が講演しました。ヒビテさんは「アフリカの子育て」というタイトルで、エチオピアの子育て事情について紹介して下さいました。エチオピアでは、子育ては地域社会ぐるみでおこなわれます。近所の子どもを預かるのは当然のことと考えられており、子どもを預けるために、いろいろと準備したり気を遣う必要はありません。例えば授乳中の母親が誰かの赤ちゃんを預かった場合には、その子にも自分の子と同じように母乳を与えます(注)。だから預けるほうも、必要があれば近所の家に子どもだけ置いて、いつでも出かけられるわけです。また最近ではエチオピアでも、都市を中心に育児に熱心な男性が増えています。これは日本の育児事情と似ており、興味深い現象です。
(注)母乳を介した感染症の心配もあるので、これと同じことを誰にでも勧められるというわけではないですが、「他人に授乳を任せられない」ことで母親の負担が増すのは間違いないように思います。
高田明さんは「ブッシュマンの子育てと子どもたちのくらし」というタイトルで、アフリカ南部で暮らす狩猟採集民で、サンと呼ばれる人々の子どもの社会化過程に関する研究を紹介しました。歌と踊りを楽しむサンの子どもたちを高田さんが記録したビデオには、まだ踊りが上手ではない年少児が、年長児の集団に受け入れられ、同じように踊りを楽しむ様子がおさめられています。異なる年齢層の子どもたちが形成する集団の遊びは、母親の育児負担を早い時期から軽減することにつながるだけではなく、子どもの社会統合を促進する上で、重要な役割を担っています。
西崎伸子さんは「日本の子育て、アフリカの子育て」というタイトルで講演しました。乳幼児死亡率のような統計を比較すると、アフリカの育児環境はたいへん厳しいように見えます。しかし昨年の夏、小学生の女の子を伴ってボツワナの狩猟採集民の村を訪問した西崎さんは、村の子どもたちが躊躇することなく、遠くから訪れた女の子の手を取り、やさしく彼らの遊びの輪に招き入れてくれたことに、たいへんな感動を覚えました。日本社会を顧みると、福島の親は「不安の中で皆が平静を装って」子育てをしています。ボツワナでの経験は西崎さんにとって、安心・安全な社会とはどのような社会なのか、深く考えさせられる出来事でした。
この講座は京都府国際センター会議室で開催され、参加者は47名でした。当日は国際センター内に育児ルームを設置して頂き、小さな子連れで参加した方々にたいへん好評でした。公開講座の様子は、2011年12月19日付の京都新聞朝刊の紙面で、詳しく紹介されました。