関西からアフリカのエイズ問題を考える(2007年10月20日)

10月20日(土)、京都府国際センター(京都駅ビル9階)において、シンポジウム「関西からアフリカのエイズ問題を考える」を開催しました。この催しは(特活)アフリカ日本協議会および(財)京都府国際センターとの共催により実現したもので、アフリック・アフリカの西真如が司会、モデレーターをつとめました。

第1部は、アフリカのエイズ問題に取り組むNGOスタッフ3名からの講演でした。一人目は、(特活)アフリカ日本協議会の稲場雅紀さんから、サハラ以南アフリカのHIV/AIDS問題:その現状と課題についてお聞きしました。二人目は、大阪大学外国語学部(旧:大阪外大)の学生が主体となって活動しているトゥマイニ・ニュンバーニの青木梨花さんから、ケニアにおけるHIV陽性者支援について話を聞きました。最後に、(特活)TICOの吉田修さんから、NGOスタッフとして、また医師・専門家として、南部アフリカを見つめ、見えてきたエイズ問題、アフリカの現状についてお話ししてもらいました。第2部では、会場からの質問を受け、パネルディスカッションを行いました。当日の参加者は58名で、講師3名とスタッフ8名を加えると、71名が参加した熱気あるシンポジウムとなりました。

さて、シンポジウムの内容ですが、各講師ごとに振り返っていきたいと思います。

始めに稲場さんから、HIV/AIDS問題についての基本認識、アフリカにおけるHIV/AIDSへの取り組み、マクロな視点からみたHIV/AIDS対策の概要(2000年〜現在)、普遍的アクセスについて、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(GFATM)の概要などのお話がありました。

HIV/AIDS問題は、アフリカだけの問題ではなく世界の問題で、日本でもHIVの感染率は増えています。但し、日本と違い、世界のHIV感染者数の70%を占めるアフリカでは、普通(マジョリティ)の人の問題になっています。それを解決するには、アフリカの国々の保健医療システムを変えていく必要がありました。しかし、80-90年代の構造調整下でアフリカの国々の保健医療システムは機能しなくなり、ようやくHIV/AIDS問題に対して世界的な取り組みが始まったのが90年代後半に入ってからでした。その空白期間にHIV感染が拡大しました。

現在は、必要としている全ての人々に対してHIV予防・治療・ケアおよび支援サービスを供給するという地球規模の政策=普遍的アクセスの実現に向けて、先進国ドナーや国連、NGOや当事者団体が連携して、さまざまな対策や政策が実施されていますが、空白の10年に国際社会がこの問題に関して何もしなかった責任は大きいのです。日本は経済大国であり、世界が普遍的アクセスに取り組むよう政府に働きかけていく必要があります。

続いて、トゥマイニ・ニュンバーニの青木梨花さんから、ケニア・ナイロビのスラムにおけるHIV陽性者支援についてお話をしていただきました。日本人のメンバーは25名で、主に大阪外国語大学(旧大阪外大)外国語学部・スワヒリ語専攻の学生で構成されています。そして、男性一人を含む15人のシングルマザーの支援を行っています。創立者である学生の1人がケニア人女性と出会い、支援活動が始まったそうです。

今までの活動の成果は、以下の3点になります。

A)経済的支援:サイザル麻のバッグを作り、給料を渡すことで、自分たちの収入で夕食代や家賃など、生活資金に使えるようになった。セックスワークから脱却できた人もいる。またマイクロファイナンスも実施する予定である。

B)精神面での支援:今までは自分がHIV陽性者であるという事実を受け入れることができなかった人も、悩みを共有し、励まし合うことで、徐々に受け入れることができるようになった。

C)啓発や医療面での支援:積極的に勉強し始めた人が、その知識を全員に共有し始めた。また知識が深まったことにより、自主的に検査に行き、ARV治療を始めた人もいる。

当事者からの要望は多いのですが、学生主体の団体ということもあり、なかなか全ての要望に対応できずジレンマを感じることもあります。でも、これからも長く続けていきたいとということです。

3人目は、TICOの吉田修さんから、医療活動から見えてきた南部アフリカのHIV/AIDS問題についてお話をしていただきました。まず南部アフリカの多くの地域で、医療を受ける以前に水や食料が不足している状況があります。90年代の空白の10年間に、南部アフリカで、医師として働いていました。構造調整の結果、教育や医療にかけるお金がどんどん削られていきました。2002年の飢饉のときにはザンビアで200万人が飢餓状態であったとも言われています。さらに温暖化の影響が、最も貧しいアフリカの国々に襲いかかっています。空白の10年のとき、勤務している地域では多くの人がエイズで亡くなりましたが、全く適切な対策がなされていませんでした。

包括的なアプローチを取れば、感染率を減らすことができると国連は言っていますが、まだ支援が不足していると思います。特にHIV/AIDS問題に関して、エイズ遺児は大きな社会問題だと思います。一部の国や機関は、その国のコミュニティが面倒を見るのが良いと言っていますが、現実は、コミュニティで面倒を見る限界を超えている、それほどエイズ遺児は増え続けています。また、働き手が死に、平均寿命が減少している中で、家族や親戚で支え合うことができず、コミュニティが崩壊しつつあります。

例えば、母子感染を減らすために、粉ミルクを飲むことを推奨することも、明日の食べ物もない地域では、現実的ではないと思います。会社や学校、コミュニティを巻き込んで、行動変容のキャンペーンを行う必要があると思います。またHIV/AIDSは、カウンセリングが非常に必要な病気で、VCTセンターの役割も大きいと考えています。

そして第2部では、講演を踏まえた上での質疑応答が行われました。

日本の中で、HIV/AIDS問題をどのようにすれば関心を持ってもらえるのか?という質問に対し、エイズ問題は日本の問題でもあるということを知らせることが大切だ、という意見や、学校に話しに行くことが効果的だと思うが、政府の政策(性教育)が、後退していることが懸念材料だという意見もありました。

また、アフリカから日本の若者が学ぶことは?という質問に対し、ケニアの当事者たちから「生きる力」を学んだ、という意見や、会場からは、スタデイーツアーでインフラ不足の問題を実感し、医療だけではなく、色々な分野の連携が重要だと思った、という意見もありました。

最後に、司会・モデレーターの西が、「アフリカでは、HIV感染者が互いに支え合って生活しており、私たちが彼らから学ぶことも多い。しかし治療薬の供給やエイズによる孤児の問題など、アフリカの人たちの努力だけでは解決できないこともある。その問題を、世界の人たちがどう支えてゆけば良いのかということを、今日のシンポジウムでは考えるきっかけになったと思う」という発言で締めくくりました。

※この報告は、アフリカ日本協議会のウエブページに掲載されたものを、一部改変の上で転載させていただきました。もとの記事はこちらをご覧ください。