紹介者:牛久晴香
「アフリカのモノ」といえば、サバンナの動物を模した木彫りの置物やカラフルな布、香り豊かなコーヒーやカカオなどを思い浮かべるだろう。本書は、これらの魅力的なアフリカのモノをもとに、生産者と協力して新たなモノを生み出し、アフリカと世界をつないでいく取り組みを描いている。
この本を出版したアフリカ理解プロジェクトは、2003年に設立された非営利団体で、日本人のアフリカへの関心を高め、日本とアフリカの活力へと結びつけることをめざして活動している。代表の白鳥くるみさんと事務局長の白鳥清志さんは、アフリカや開発援助に関心のある人びとのあいだで広く知られた存在だ。
アフリカ理解プロジェクトは、2010年から人びとの所得向上や雇用促進をめざしてエチオピアで手工芸品生産者の支援プロジェクトを展開してきた。近年では、COVID-19のパンデミックによる観光業の停滞で大きな影響を受けたアーティストや職人を支援するため、商品開発やオンライン販売の取り組みも開始している。これらのプロジェクトの詳細や成果を記したのが本書である。
しかし、本書は「プロジェクトの成果報告書」では断じてなく、アフリカ各地のモノづくりの背景や文化、その魅力の紹介により多くのページを割いている。本書の後半では、布や植物、料理、音楽など、アフリカのモノを広く取り上げ、それらを日本で楽しむためのアイデアを提案している。たとえば、アフリカンプリントを使った布パネルやアロマスプレーの作り方など、読んでいるうちに自分でも試してみたくなるアイデアが満載だ。
80ページ余りのコンパクトな本ながら、情報量は豊富である。日本語で読める本の中で、これほど多彩なアフリカのモノを網羅的に紹介したものは珍しい。現地で撮影されたたくさんの写真や、アーティストによる描き下ろしの挿絵も大きな魅力となっている。
プロローグとエピローグでは、アフリカ理解プロジェクトの目標が述べられている。それは、アフリカの日常や人びとのクリエイティブな力を伝えることで、負のイメージを払拭することだ。本書にもその信念が色濃く反映されており、支援の成果を強調するのではなく、アフリカの人びととそのモノが持つ魅力が存分に描き出されている。
本書を読み終えるころには、明るく豊かなアフリカという言葉が自然に聞こえるようになるだろう。アフリカを知る第一歩として、ぜひ手に取ってほしい一冊である。
書誌情報
出版社:アフリカ理解プロジェクト
発売日:2024年1月31日
単行本(ソフトカバー):84ページ
ISBN-13: 978-4990465759
商品ページ:https://amzn.asia/d/bNfaAyn