岩井雪乃
「セレンゲティ・人と動物プロジェクト」(セレプロ)は、2018年度にプロジェクト名を変えて「アフリカゾウと生きるプロジェクト」(ゾウプロ)になりました。
2006年のアフリック創立時から実施してきたセレプロは、奨学金による人材育成をメインにして始まり、その後、2013年からはアフリカゾウが畑を襲う獣害問題への対策にシフトしました。そこで今回、活動内容がわかりやすいプロジェクト名に変更することにしました。
ゾウ追い払いチームのための見張り小屋建設
活動地のセレンゲティ県ミセケ村では、毎晩20人ほどの若者が、ゾウから畑を守るパトロールをおこなっています。雨の日も寒い日も、毎日毎晩、見張らなければなりません。ゾウが1回でも入ってしまえば、1世帯の畑が2時間ほどで食べつくされてしまいます。ゾウは雨でもやってくるので、1日たりとも油断できません。メンバーたちは、いつもわずかな睡眠時間しかないのです。
そんな彼らを支援するために、2018年は「見張り小屋」の建設を支援しました。これまでは、自然にある大岩の影で風雨をしのいできました。小屋があれば、雨の日や寒い日に休みやすくなります。3軒を建設したうちの1軒は、アフリックからの支援によるものです。
一方的な「バッファゾーン」
「小屋のおかげでゾウの追い払いがしやすくなる」と思いきや、新しい問題が浮上してきました。「バッファゾーン」です。2018年6月に政府が突然、「動物保護区の境界線から村側に500mをバッファゾーンにする。人工物の建設、畑の耕作禁止」という規制を出してきたのです。私たちの見張り小屋の2軒は建設を始めていましたが、そこがバッファゾーンだと言い出したのです。そして、セレンゲティ県の職員が、せっかく作った小屋の基礎部分を破壊してしまいました。
私たちは、仕方なく境界線から500m以上離れたバッファゾーンではない場所に小屋を建て直しました。しかし、本当は境界線により近いところに小屋を作りたかったのです。そのほうがゾウの接近に、より早く気づけます。政府は、ゾウ対策を支援するどころか、妨害ばかりしてきます。
そして何よりも、このバッファゾーンは住民の土地を奪って保護区を拡大しています。バッファゾーンとなった土地に、すでに家を建てて畑を耕作して生活している人たちが、セレンゲティ県内に何千人もいます。今のところ、そういった人たちから強制的に土地や資産を奪うことはしていませんが、政府がいつでも強制移住を強行する可能性があります。
村の人たちによる集団的な抵抗は起きていませんが、人びとの生活を守る運動を引き続き応援したいと思います。