おこげまでおいしいウガリを・・・(タンザニア)

八塚 春名

タンザニアに暮らすなら、ウガリを食べないでは暮らせない。タンザニアの女性なら、ウガリを作れないなんてあり得ない。ウガリとは、日本語で練り粥、固練り粥などと訳される、トウモロコシや雑穀の粉をお湯で練ったたものだ。粉の種類や製粉の仕方によって、味や硬さが違う。私はタンザニアの村で育ったから、村で食べる、ちょっと硬くて甘い雑穀のウガリが一番好き。でも町に暮らす多くの人びとは、トウモロコシの、やわらかくて真っ白なウガリが好きだ。

写真1:トウジンビエのウガリ(左)とおかず(右)

 

写真2:トウモロコシのウガリ

ウガリ作りは単純にいうと、お湯に粉を溶かして練るだけ。しかし力と慣れが必要で、練り方ひとつでおいしさが決まる。粉っぽさが残ったり、焦げてしまったりしないように、木べらを上手に動かして練ることが大事なのだ。しかも、家族が大きければ大きいほど、ウガリも大きくなり、練るのがとても大変になる。

ウガリは、まず、鍋に水を入れてわかす。そして、お湯が湧く少し前に粉を少しだけ入れる。そして沸騰したら、粉をたくさん入れる。どのくらい入れるかは、勘に頼るしかない。粉を入れたらすぐに触ってはいけない。しばらく放っておいて、ぷくぷくと泡がわいてきたら、さあ、木べらを使って練り始めよう。量が多ければここからが大変だ。粉が残ったりしないように全体を均等に練らなければいけない。力をかけると鍋が動くから、鍋をおさえることも必要だ。柔らかいと判断したら、ちょっと粉を足す。ひととおり混ざったら、またしばらく放って、再び練る、そしてまた少し放っておく。粉っぽさがなくなったら、完成。量にもよるが、7?8人分の大鍋であれば、粉を入れてから10分ほどかかるだろうか。

写真3:ウガリを練るおばあちゃん

できあがったら、冷めないように、おいしそうに、全体を丸くすることもポイントだ。食べる時は、みながひとつのウガリのかたまりに手を伸ばして一緒に食べる。ウガリは決してスプーンやフォークを使わない。必ず手を使わないとおいしく食べられない。

そして、ウガリの大きなポイントは、おこげを上手に作ること。ウガリのおこげは、まるで煎餅のようで、パリパリととてもおいしい。しかし、ほどよいおこげを作ることもまた難しい。慣れないと、おこげができなかったり、あるいは、焦げてしまったり、その加減がとても難しいのだ。

私はタンザニアに2年半暮らし、いつ頃からか、ウガリを作れるようになった。「これでいつでもタンザニアで嫁にいける」と、お世話になっている家の母さんは言ってくれるけれど、いまだに母さんが作るようなきれいなおこげのついたウガリは作れない。おこげまでおいしく食べられるウガリが作れるようになってこそ、きっと、一人前のタンザニア女性なんだろう。

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日本とアフリカに暮らす人びとが、それぞれの生き方や社会のあり方を見直すきっかけをつくるNPO法人「アフリック・アフリカ」です。